令和4年11月 決算特別委員会

やまなし地域産業活性化プロジェクト支援事業費補助金について

 渡 辺 まず、決算説明資料の産の6ページ、やまなし地域産業活性化プロジェクト支援事業費補助金9,210万4,000円について、意見書に基づき何点かお伺いします。
 この事業は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響によって大きな影響を受けた産業への支援策と承知しておりますが、この補助金の概要も含めた事業目的についてお伺いいたします。

 成長産業推進課長 委員も御指摘のとおり、この事業は新型コロナウイルス感染症の影響により、落ち込んだ県内経済の反転攻勢を図るため、国の地方創生臨時交付金を活用し、令和3年度9月補正予算に計上させていただいた臨時事業でございます。
 具体的には、県内の事業者団体が新たに開催するキャンペーンやイベントなど、消費喚起や需要拡大を図る取り組みに必要な経費を支援することにより、地域産業の活性化や県内経済の回復を図ることを目的に実施した補助事業でございます。

 渡 辺 県内産業の支援策ということで、令和3年度も新型コロナウイルスが蔓延して感染拡大が続いていた状況の中、そういった試みをしていただいたことは、よかったなと率直に思っております。
 本補助金については、県が直接、各事業者さんから申請を受けるのではなく、どこかの事務局的な事業者さんを選定して、その後、事業者さんが先ほど説明があった各種イベントやキャンペーン等の申請を受けるつくりになっているかと思います。そこで、事務局的なものも含めて、事業者選定の経緯と、その後の各種キャンペーンの公募を含めて、その経緯と結果についてお伺いします。

 成長産業推進課長 委員の御指摘のとおり、業務を円滑に実施するために、事務局を担う団体を公募により選定し、この事務局を通じて補助事業者の募集、補助金の交付などを行うスキームになっております。まず、事務局を行う団体につきましては、予算議決後の10月7日から10月13日までの間、県のホームページを通じて公募を行い、審査の結果、HISセレオ甲府営業所を選定したところであります。
 補助対象になる事業者ですが、県や事務局のホームページを通じて、令和3年度中に計4回の公募を行い、また、商工団体等も通じて広く周知を図ったところでございます。
 その結果、52団体からの応募をいただき、外部の有識者を交えた審査会を経て、補助事業者は計41団体を選定しまして、1団体当たり最大300万円の補助金を交付したところです。令和3年度の執行額は、委員の御指摘のとおり、9,210万4,000円となっております。

 渡 辺 事務局は、HISさんが公募に応じて、申請して決まったとのことですが、これに限らず、公募の期間が10月7日から10月13日までと、若干期間が短いのではないかなと思うところです。それはそれとして、実際に補助金を交付した団体が41団体ということで、先ほど、イベントやキャンペーンという答弁がありましたが、実際、この最大300万円の補助金を使ってどのようなイベントやキャンペーンを行ったのか、お伺いいたします。

 成長産業推進課長 補助事業者41団体の内訳を申し上げますと、甲府商工会議所など商工関係が8件、富士五湖観光連盟など観光関係が7件、県ワイン酒造組合など事業者団体が10件、中央市農業振興公社など農業関係が4件、その他が12件となっております。具体的な取り組みとしましては、県ワイン酒造組合による山梨ヌーボー・山梨ワインフェア、これはイトーヨーカドー甲府昭和店において開催したものでございます。
 それから、富士五湖観光連盟によるSNSを活用した観光キャンペーン、これはワクチンを2回接種した方が富士五湖に来訪した際に撮影した写真を連盟のツイッターに投稿すると、抽選で名産品をプレゼントするというイベントでございます。
 それから、西桂町商工会によるデジタルスタンプラリー、これはLINEのポータルサイトを構築し、友達登録をしてくれた方を対象にデジタルスタンプラリー、抽選会を実施しております。
 その他、都内での県産品の販売やPR、アウトドアサウナなどの集客イベントに対して助成を行ったものであります。

 渡 辺 特に商工団体や農業団体等も含めた、さまざまな団体がキャンペーンやイベントを行う中で、新型コロナウイルス感染症の影響でなかなか集客や売り上げが上がらない産業を支援していくキャンペーンに補助されたことがわかりました。これは臨時事業ですが、令和3年度にこういったキャンペーンやイベントに補助金を支出したことを踏まえ、本事業の成果を県としてどのように考えているのか、最後にお伺いします。

 成長産業推進課長 実際に実施した事業者からも、新型コロナウイルス感染症の拡大により打撃を受けた地域のにぎわいの創出や消費拡大、販路拡大等が図られたとの声を多数いただいているところです。
 県といたしましても、コロナ禍における地域経済活動の回復等へ向けた活動、また、その先における反転攻勢という観点から、一定の効果があったものと考えているところであります。

土地の貸付料について

 渡 辺 決算説明資料の林の15ページ、土地の貸付料について何点かお伺いいたします。
 部局審査の折に、土地の貸付料18億8,180万9,000円につきましては、今までの素地を基にしていた賃料から現況を基にした賃料に変わったものも含まれているとの答弁をいただきました。それを踏まえて伺いたいと思いますが、今回の見直しによって、県民はどのくらい賃料がふえているのかを気にしていると思います。
 その上で、令和2年度の収入済額は23億407万8,000円と記載されております。訴訟対象地の3億3,000万円を抜いても1億数千万円減っています。そのことを踏まえて、令和2年度と比較して、現在、令和3年度の土地の貸付料はどのような状況か、まずお伺いします。

 県有林課長 今、委員がおっしゃいましたとおり、令和3年度の土地貸付料につきましては18億8.180万9.000円、令和2年度が23億407万8.000円でございますので、比較しますと4億2.226万9.000円のマイナスとなっております。
 この要因でございますけれども、令和3年度は、委員のおっしゃいました富士急行との賃料相当額を損害賠償金の一部として受け入れ、会計上は雑入として処理をしたために、決算報告書では土地貸付料の費目には入っていないこと、あと、令和4年2月議会で議決をいただきました減免案件などの収入が、令和4年度になった案件が多いこと等によるものでございます。
 こうしたことから、令和2年度との対比では契約の対象案件が大きく異なりますので、決算書では単純な比較ができない状況でございます。

 渡 辺 単純な比較ができないということですが、そもそも雑入というよくわからない科目に入っていることも私としては不可思議な上に、それを抜かしても1億数千万円の中で、減免の部分の95件以外に、全体的な見直しが500件以上あったと思いますが、そのことを考えても数字上なかなかよくわからないです。
 恐らく比較はできるはずです。令和2年度に載っているものと令和3年度に載っているものを比較すれば、どれだけふえているのかは比較できると思うので、御答弁いただけなかったことは残念に思います。
 次に、富士急行の土地については、県の考え方では、賃料の算定方法に重大な誤りがあったとして、地方自治法237条2項による適正な対価ではないという判断の中で違法無効という結論を出したと承知しております。それであれば、前から言われているとおり、ほかの土地についても素地で賃料を算定していたにもかかわらず、ほかの土地は有効で、富士急行の土地だけ違法無効になるというその整合性は一体どうなるのか、改めてお伺いします。

 県有林課長 県有財産の貸付けにつきましては、地方自治法第237条第2項により、条例又は議会の議決がない場合は適正な対価で行わなければならないと規定をされており、適正な対価とは、これまでの法的議論の結果、現況を基礎とした土地価格をもとに算定すべきものとの結論に達したことから、算定基礎の見直しを行ったものでございます。
 こうした中で、富士急行との別荘地の契約が違法無効と主張する根拠は、同社との賃貸借契約の締結時点では既に造成が完了し、かつ、その費用も既に回収をされていることなどから、山林原野の土地価格を基礎とした賃料算定を正当化する事情は見当たらないというものでございます。
 しかし、これ以外の貸付地につきましては、このような状況が全て当てはまる案件は認められないので、算定基礎が山林原野の素地であったということのみで全てが違法無効となるとは考えでございません。

 渡 辺 幾つか挙げていただいた条件に全て当てはまるところはないにしても、一部当てはまるところは恐らくあろうかと思います。そのすみ分けが、説明を聞いてもどうしてもダブルスタンダードの感は拭えないなというのが私の率直な感想であります。
 ただ、これを突き詰めても話は平行線になると思いますので、次に進みますが、やはり、県民に説明するために、誰もが納得できる公平で公正な基準をつくって、一方で違法無効というのならば、もう一方も違法無効であるし、適正であれば適正である、しっかりとその基準を明確にしたほうがいいと思います。
 一部当てはまるけれども全てに当てはまらないからという言い方は少し納得できないかなという感はあります。次に移ります。
 そもそも今回の令和3年度の見直しにおいて合意に至らなかった契約の部分は、収入未済額3.943万3.000円の中に入るのか、それとも、ここではなく違うところに記載されているのかお伺いしたいと思います。

 県有林課長 未合意の案件につきましては、令和3年度中に請求を行っていませんので、当決算書には記載はされていません。

 渡 辺 令和3年度の土地の見直しについての全体像は、この決算書から全てを見ることはできないことが確認できました。
 そして、賃料改定に当たっての賃借人と賃貸人との合意について、議会からも丁寧な説明が必要だったのではないかと常々言われている中で、私としてもそれは必要であっただろうと思っています。
 例えば、基本的に契約は有効ですが、今回の賃料改定に当たっては、今までの素地を算定としたものではなく、現況を所与としたものに変更させていただきますということを明確にお伝えする。
 一方で、国交省の不動産鑑定基準によれば、実際の新規賃料、私は新規賃料だと思っておりますが、新規賃料は、新規に契約を締結するときにまず提示する賃料のことで、通常、契約が有効であれば、継続賃料をもって提示するべきところを、今回、新規賃料でやっていただきたいとお伝えする。
 あるいは今回、契約改定を行いますが、これは、富士急行との訴訟が継続中になっており、司法の判断が下った場合は変更になる可能性があることなどをお伝えする必要があったと私は思っております。
 その点を踏まえて、賃借人の方に対してどのような丁寧な説明を行ったのかお伺いします。

 県有林課長 賃借人に対しましては、まず、県民全体の財産である恩賜有財産の貸付けは、地方自治法の第237条の2項により、条例又は議会の議決がない場合は、適正な対価でなければならないと規定をされていること、また、適正な対価とは、これまでの法的な議論の結果、現況を基礎として算出した土地価格をもとに算定すべきものとの結論に達したこと、これまで契約前の山林原野の土地価格にもとづき算定をしていたため、これを、現況を基礎とした算定に見直す必要が生じたこと、こういったことを継続・新規という専門的な言葉は用いておりませんが、丁寧に説明した上で、新たな貸付料として、純賃料と所在市町村交付金の額を提示しまして、理解が得られるように努めてまいったところでございます。

 渡 辺 算定を見直すに当たり現況にすることは、県の賃借人にとっては、今まで平穏かつ公然と県と契約を締結してきたものが大きく変わるわけなので、十分説明してきたとは思いますが、やはり、専門用語かもしれませんが、通常であれば契約は成立して有効なところ、継続賃料で行うべきところをもっと重々と説明して合意を得たかどうかが大きなところになろうかと私は思います。
 そのことを申し上げ、また、今後、訴訟が継続しておりますので、訴訟や判断によって県が適宜適切な対応を取っていかれることをお願い申し上げて、次の質問に移ります。

演習場交付金の執行残について

 渡 辺 令和2年度まで、こちらも平穏かつ公然と交付していた演習場交付金が、ここに来て初めて執行残となったと記載されておりますが、改めて執行残となった理由についてお伺いします。

 県有林課長 演習場交付金の執行残1.887万7.000円でございますが、内訳としては、国の演習場貸付料の額の確定に伴い残額が生じたことが一つございます。
 もう一つは、富士急行の山中湖畔の別荘地に係る交付金相当額で、この額が大部分を占めておりますが、契約の効力をめぐって係争中であることから支払わなかったものでございます。

 渡 辺 それでは、令和2年度までの演習場交付金も、県が契約は違法無効であるから支払えないというのであれば返還請求されるのですか。

 県有林課長 現在、係争中でございますので、裁判の決着を待って判断をする考えでございます。

 渡 辺 演習場交付金については、裁判の結果、契約が有効であれば速やかに、かつ適正な価格をお支払いいただければと思っております。
 一方で、県は、賃貸借契約については違法無効であると主張しながら、演習場の使用については地権者に同意を求めていると報道等で伺っています。結局のところ同意は撤回されておりますが、違法無効を主張しておきながら同意を求めることは、どのような考え方にもとづいているのかお伺いします。

 県有林課長 演習場の使用につきましては、北富士演習場対策協議会の協議を経て、地元総意のもとで締結 された北富士練習場の使用協定によって地元の合意がなされております。したがいまして、毎年送付しております同意書は、その関係者への周知を目的としたものでございます。

 渡 辺 なかなか無理のある理屈だと思います。同意書とあり、同意を求めているのに、それは周知であると言われて、誰が納得するかという話になるかと思いますが、それが県の考えであればやむを得ないかと思います。
 最後に、北富士演習場の交付金については、地元でも大変関心のあることで、県が一方的に、契約が違法で無効であるからといって勝手に交付をしなくてもいいものかどうかという点も含めて、さまざまなことを考えて慎重に対応していただくことを改めてお願い申し上げて質問を終わります。

訟務費について

 渡 辺 私のほうからは、意見書をこのグループについては3件出させていただいておりますが、時間の関係上、訟務費についてのみ質問させていただきます。
 初めに、部局審査の折に資料要求しました資料を提出していただきまして誠にありがとうございます。その資料も使わせていただきながら質問をさせていただきたいと思います。
 この訟務費をお伺いするに当たって前提となる、訴訟代理人弁護士の選任及び報酬に関する指針を同時に提出していただきましたので、まず、これについてお伺いしていきたいと思います。
 この方針が策定される以前の弁護士報酬の考え方とは大きく異なる指針になっていると思いますが、策定前の弁護士報酬の考え方を明示した上で、この指針の策定理由についてお伺いします。

 行政経営管理課長 本県では、委員の御指摘のとおり、従前は顧問弁護士の御理解のもと、非常勤嘱託または特別非常勤として弁護士を任用し、その月額報酬の中で法律相談や訴訟追行の業務をあわせて行っていただいていた状況でございます。
 しかしながら、山中湖畔県有地に係る住民訴訟の訴訟追行に関し、豊富な実務経験や高度な法令の運用解釈に高い見識を有する弁護士が必要と判断し、非常勤の顧問による方法とは別に、訴訟委任契約を締結して訴訟追行することといたしました。
 この点につきましては、令和3年2月定例県議会においても、弁護士選任並びに報酬に関する基準を定め、透明性ある仕組みづくりに尽力するとともに、着手金をはじめとして最小の経費となるよう努力することなどを求める附帯決議がなされました。この附帯決議を踏まえ、同年3月31日の全員協議会における説明を経て、同年4月に訴訟代理人弁護士の選任及び報酬に関する指針を策定いたしました。この指針の中では、県民利益の最大化を図りつつ、本県の県政執行に関する訴訟に対処するため、訴訟代理人弁護士の選任とそれに必要な報酬について定めているところでございます。

 渡 辺 今まで、こういった指針等がなかったがゆえに弁護士費用が不透明であったことは確かに否めなかったことであり、議会としても、透明性を担保するためにも指針を設けるよう要望したことも事実であります。しかし、以前の方法であれば、山梨県弁護士会の協力も得ながら、比較的低廉な金額で、山中湖畔の案件のみならず、さまざまな大きな訴訟についても非常勤嘱託として月額制、年俸制でお願いしていた経緯があり、それを大過なく進めていただいており、県にとって大きな不利益はなかったと私は記憶しております。
 そうであればこそ、そういった形の中で今後もお願いしていくことが、財源となる貴重な県税を使って弁護士費用を捻出するに当たって進むべき道であったのかなと思います。この指針を策定してしまったがゆえに、今まで年間数百万円で済んでいた弁護士費用が2桁も違う億単位の金額を捻出することになってしまったことは、甚だ私にとっては残念なことであると申し上げておきます。
 それでは、提出していただいた資料に基づいて何点か質問させていただきます。
 まずは、2月補正における2件の住民訴訟に関する着手金の予算に不用額が出ております。この不用額が出た経緯についてお伺いいたします。

 

 行政経営管理課長 まず、2件のうちの1件、令和3年8月11日付で通知されました住民監査請求の監査結果を不服として提起された訴訟につきましては、予算額293万7.000円に対し、執行額は184万8.000円となり、108万9.000円の不用額が発生しております。
 また、令和3年8月25日付で通知された住民監査請求の監査結果を不服として提起された訴訟につきましては、予算額547万8.000円に対し、執行額は311万9.000円となり、235万9.000円の不用額が発生しております。
 この2件の住民訴訟については、経済的利益の額及び訴訟の内容から困難な事件であると判断をし、旧日弁連報酬等基準をもとに積算をして、それぞれ予算計上したところでございます。令和3年2月議会における附帯決議や、令和3年9月議会の総務委員会における着手金の削減についての御意見を踏まえて契約交渉に当たり、旧日弁連報酬等基準により算定した額を下回る金額で契約を締結したことにより、不用額が発生したところであります。

 渡 辺 予算議決後に、弁護士と交渉をして減額していただいたと認識しましたが、それであれば、4月の専決における1億4.300万円については、減額の交渉はされなかったのですか。

 行政経営管理課長 こちらは、専決の額を決める前に交渉を行った上で、1億4.000万円余まで額を縮減したという経過がございます。旧日弁連報酬等基準に当てはめると、6億円余の額になることが見込まれましたので、2件の裁判を1件の金額で契約していただく交渉の後、予定されていました反訴もこれに含めることとし、5分の1以下の縮減をお願いし、最終的には1億4.000万円余の契約で弁護士と交渉することができ、専決処分をさせていただいたという経過がございます。

 渡 辺 専決の額については後ほど改めて伺いますが、交渉できるものであれば、こちらについてもしっかり交渉していただきたかったなという思いはあります。
 次に、この9月補正における2件の住民訴訟に関する着手金の決算額について、指針では、3段階ある中で、その他の困難な事件としており、そもそも、1億円以上の事案ではないにもかかわらず、困難な事案として算定をされた理由について伺います。

 行政経営管理課長 訴訟代理人弁護士の選任及び報酬に関する指針の中で、困難な事件とは、事件に係る経済的利益の額が大きい事件、その他の困難な事件としております。令和2年度の調査委託及び富士急行から提起されました訴訟に関する訴訟代理人契約は、これを適法かつ有効なものとして維持されることが県として重要であり、利益となるとすることが基本的な考え方でございました。
 その上で、令和3年8月11日付で通知された住民監査請求の監査結果を不服として提起された、訴訟の対象となる調査委託費は6.600万円と高額であること、住民訴訟に際し、昭和初期からの膨大な資料を解析し、複雑な法律関係を整理する極めて労力の多い、困難な作業が伴う事案であることを改めて立証し、委託金額の正当性を証明する必要があるため、困難な事件として位置づけたところでございます。
 また、令和3年8月25日付で通知されました住民監査請求の監査結果を不服として提起された訴訟の対象となる1億4.300万円の弁護士着手金については、山中湖畔県有地に係る富士急行に対する損害賠償請求に係る県の主張を支えるものであること、訴訟追行に際しては非常に高度な法解釈が求められるものであること、県から富士急行に対する具体的な金銭を請求する反訴を含めた契約であること、訴訟の対象物が1億円を超す規模であることを踏まえ、困難な事件として位置づけたところでございます。

 渡 辺 いわゆる住民訴訟ではなく、富士急行との訴訟についての困難性が大きく関与する中で、こういった当てはめをされたと理解いたしましたが、仮に、この住民訴訟に勝訴したとしても、損害賠償金等を得る類いのものではありませんので、こういった今後も起こり得るであろう、例えば義務づけ訴訟等の住民訴訟が起きた場合に、この規定を当てはめれば、毎回このような多額な金額を支出していかなければならない可能性を大きくはらんでいる指針であると私は思っております。
 以前であれば、月額制、定額制の中で、こういった訴訟も担当していただいて、恐らく大過なく経過してきたと思います。今後はこういった訴訟が起こった場合に、同じような事例が多発する可能性があることを踏まえ、改めて妥当性についてどのように考えているのか伺います。

 行政経営管理課長 2件の住民訴訟につきましては、その他の困難な事件と判断したことは先ほど御説明したとおりでございます。この区分での着手金については、旧日本弁護士連合会報酬等基準に基づき算定した額を上回らない額としております。旧日弁連報酬等基準における経済的利益の額は、県に歳入が生じるかどうかではなく、当該事件等の対象について、同基準に定める算定基準に照らして算出するものであるとしております。例えば、民事訴訟の損害賠償請求事件の被告となる場合、勝訴しても被告には何の歳入もございませんが、経済的利益の額は、あくまでも当該事件の対象、すなわち損害賠償の請求金額を基準として算出することとなります。これと同様の考え方になると考えております。
 8月11日の監査結果に基づく住民訴訟の対象は、県から弁護士に対する令和2年度の調査委託に係る調査委託経費6.600万円の支出の返還請求であり、8月25日の監査結果に基づく訴訟の対象は、県から弁護士に対する昨年度の富士急行から提起された訴訟に係る弁護士着手金1億4.300万円の支出の返還請求となっております。このため、当該事件の対象は旧日弁連報酬等基準に照らせば、いずれも金銭債権に該当し、それぞれ6.600万円、1億4.300万円が経済的利益の額となります。これらの経済的利益の額をもとに算定しました金額の範囲内でそれぞれ契約を締結したものでございます。
 いずれも我が国の弁護士費用を算定する基準としまして、実務上広く用いられている旧日弁連報酬等基準による算定金額の範囲内であることから、妥当なものであると考えております。

 渡 辺 私の質問は、この金額が旧日弁連報酬等基準に照らして妥当かどうかを聞いているのではなくて、以前の県の運用の弁護士費用の算出方法と比べて、今後、過大になりすぎるのではないかと危惧して質問させていただきましたので、少し話がかみ合わなかったと思います。私としては、今後この方法でやること自体に甚だ疑問を感じるところです。
 次に、4月の専決処分について大きく2点ほどお伺いします。この専決処分は、地方自治法179条の、特に緊急を要し、議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであることを理由に専決処分を行ったと承知しておりますが、適法性について、特に、この179条の考え方としては自由裁量ではなく羈束裁量、法規裁量、客観性が求められると言われております。そのことを踏まえて、令和4年4月臨時会で補正予算として上程していただきましたが、整合性も含め、この専決処分の適法性について改めてお伺いいたします。

 行政経営管理課長 専決処分の件について改めて御説明をさせていただきます。令和3年3月1日、山中湖畔の県有地につきまして、富士急行は県を相手に甲府地裁に訴訟及び仮処分申立事件を提起しました。県に訴状が到達したのが同年4月5日でございました。到達した後に訴状等の内容を確認し、指針に基づき、訴訟代理人の選任作業に入りました。甲府地裁への答弁書の提出期限が同年5月6日となっており、速やかに訴訟追行体制を整備しなければならない一方で、令和3年2月議会における附帯決議を踏まえ、着手金を最小のものとするためのぎりぎりの交渉を足立弁護士との間で重ねました。
 結果として、他の法律事務所への打診も含め、最終的に調整が終わったのが4月28日でございました。早急に訴訟代理委任契約を締結し、訴訟追行体制を整える必要があったこと、臨時議会を招集する時間的余裕がなかったことを踏まえ、令和3年4月30日付で着手金1億4.300万円に係る補正予算を専決処分させていただいたところでございます。
 本年4月19日の臨時議会について説明をさせていただきます訴訟が2件ございまして、訴状が県に到達したのが3月31日と4月1日でございました。内容を直ちに確認をしたところ、1件は、県内の公立中学校のトラブルに基づく県の聞き取り調査などがハラスメントに当たり、原告が精神的苦痛を被ったとして500万円の支払いを求めるもの、もう1件が傷害事件の被疑者が警察官に逮捕勾留されたことが権限濫用に当たり、精神的苦痛を被ったとして100万円の支払いを求めるという内容でございました。
 これらの訴訟内容及び訴額から、指針における通常の区分に該当すると判断できましたので、この点につきまして担当する弁護士にも内諾を得られるなど、もろもろの調整を速やかに行うことができたところでございます。4月19日の臨時議会におきまして、7日前の4月12日に招集告示を行うなど、招集までに時間的余裕がある状況でございました。このように、本年度の臨時議会を招集できたのは、訴訟の規模、内容等が昨年度とは全く異なる状況によるもので、昨年度専決処分せざるを得なかった際の状況と事情が異なる点につきまして御理解を賜りたいと考えております。

 渡 辺 確かに内容の差異こそあれ、専決処分のほうは4月5日訴状到達、答弁書提出は5月6日、もう1件、補正のほうは3月31日訴状到達、4月19日答弁書提出ということで、むしろこちらのほうが時間的に逼迫していた中、臨時議会を開いていただいて補正予算を上程いただいたことを考えれば、果たして本当に、専決処分における時間的余裕がないことが明らかであったのかについては、いささか疑問に思うところは拭えません。
 また、それ以上にこういった訴訟が起こることは報道等でも予測できていたかと思います。そしてまた、ここに至るまでの間に、県の強引な手法が訴訟を誘発させたとも言える側面もあろうかと思います。そういった点も含め、準備期間は相当程度あったのではなかろうかと思います。
 そのような面も含め、この専決処分は議会に相談をした後に、そういった合意形成を経ていくべきだったのかなと思います。特に、さきに行われました2月定例会で予算案は修正され、訟務費は減額され、そして、附帯決議も付いたという経緯を踏まえると、こういった巨額の弁護士費用を専決処分する場合は、やはり議会等の合意を経て、本当に議会を開く時間的余裕がないことを、我々も含めて納得した上でやっていただきたかったなと切に思っているところであります。
 次に、この1億4.300万円という金額について、旧日弁連報酬等基準を使うとこうなるとの説明は再三受けておりますので、そこについて言うことはありません。ただ、今回の訴訟は、住民訴訟と多くの論点が重なる部分もあります。その上、住民訴訟を担当していた弁護士にお願いすることもあります。そして、その訴訟代理人は、住民訴訟の折は指針が策定される前の弁護士費用で事件を受託していただいている事実もあります。そんな点を大きく踏まえて、やはりこの金額を着手金として支払うのは県としていかがなものかと私は思っております。
 以前に住民訴訟を担当していた弁護士に、同じ論点を多く含む訴訟を担当していていただく上で、お支払いする着手金として過大になりすぎるのではないかとの意見が県民からも上がっているところです。そこで、金額の妥当性について改めてお伺いいたしたいと思います。

 行政経営管理課長 着手金の妥当性につきましては、現在の住民訴訟が進行中であることから、その影響も考慮しなければならない状況でございますが、決算の認定をお願いしていますので答弁をさせていただきます。
 旧日弁連報酬等基準によりますと、経済的利益が3億円を超える場合は経済的利益2%に369万円を加えることとされております。訴状によりますと、対象となる土地につきまして、賃貸借期限が平成29年4月1日から20年、賃料年額3億2.500万円余の定めによる賃借権を有することを確認することが請求の第1番目であり、本件における主たる争点が土地の賃借権を主な争点とすることは明らかでございました。また、富士急行が提訴した際の裁判にかかる手数料につきましても、主な争点の一つは土地の賃借権とし、その算定にあたっては土地の価格を基礎としており、本件訴訟に関する裁判所の認識も同じものであると承知しております。
 旧日弁連報酬等基準によりますと、賃借権についての経済利益は対象となる物の時価の2分の1の額と定められておりますので、県が取得しました不動産鑑定書のうち、最も安い金額である大河内不動産鑑定事務所により算定した平成29年4月1日時点の対象不動産の基礎価格324億円をもとに交渉を行ったところでございます。
 この後、大変厳しい交渉を行い、本来なら対象となる裁判は確認請求と仮処分申立ての2つあるので、それぞれの裁判について契約する必要があるところ、2つの裁判を合わせて一本の契約としました。加えて反訴も含めることとし、反訴を提起するに際して必要となる着手金についても払わなくて済むようにしました。
 また、着手金の算定におきましても、基準では経済的利益の2%で算定するところを、1.2%で算定し、さらに令和2年度の調査委託経費である6.600万円も差し引くなどの経費縮減に努めたところでございます。
 同じ論点を多く含む住民訴訟を担当していた弁護士に対する着手金として多額との御指摘でございますが、繰り返しになりますが、令和2年度の調査委託経費である6.600万円を控除したことで住民訴訟と争点が一部共通することを算定上考慮させていただきました。この結果、本来、旧日弁連報酬等基準で算定すれば6億円余になるところ、4分の1以下の1億4.300万円まで縮減、さらに反訴を加えて8億円余となるところ、5分の1以下の縮減となっております。
 このような交渉の結果、住民訴訟と争点が一部共通することを算定上考慮した上で、弁護士費用の算定基準として実務上広く用いられております旧日弁連報酬等基準を大幅に下回る金額の着手金となっていることから、妥当であると考えているところでございます。

 渡 辺 私は、旧日弁連報酬等基準を使うことが目的化しているのではないかという危惧さえ覚えます。使うにしても、これはあくまでも着手金等の弁護士の報酬等を最小限にするための手段であり、必ずしも基準を使うことが全てではないと申し上げたいと思います。以前の弁護士報酬の基準であれば、このような多額の金額になることもなかっただろうし、そういった理解も以前の弁護士の先生方には得られていたと思います。公益弁護士だと自負されていた方々もいらっしゃいました。そういったことを考えると、指針をつくって、1億4.300万円という巨額の着手金を支払ったことにより、今後の県政の弁護士との関わり方が大きく変化してしまったことをとても残念に思っております。
 このことについては幾ら説明を聞いても私の中では納得できず、決算審査意見書の特に留意すべきことに丸をつけましたので、それ以上に、不当な支出ではなかったのではないかということを申し上げて質問を終わらせていただきます。